オキョア・ドキュメント

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データ系の野球記事に対して思うこと

野球オタクの領域まで行くとどうしても触れがちなのがデータ系の記事。選手の特徴や状態について詳しく知る手段として、最近のトレンドに関する情報収集として、DELTA社や個人のプログについての内容を興味深く捉えています。

 

しかしながら、私はこういった記事を読んでいると、どうしても重箱の隅をつつく小姑のようになってしまうのです。

例えば、直近の試合で打ち込まれてる不調の投手がいて、好調の頃に比べて高めに投げ切れてないデータがあると。それで「〇〇(投手)が打ち込まれてる原因は制球が悪化したからです」って結論付けられていると、じゃあその不調、高めに投げ切れなくなった状態を引き起こしてる"制球悪化の原因"とやらは何だよ!って思うんですよね。

それでいて、大抵そういった"記事で結論付けられている原因"の原因までは言及されてない。これでデータを分析した結論って言えるのか?そもそも結論付けられてなくない?(できないのかもしれないが)って常々思うわけなんですよ。

 

野手だと、今年特に気になったのがDELTA社が開幕直前に出していた西川遥輝選手の記事。

https://full-count.jp/2021/11/17/post1157431/

https://full-count.jp/2021/12/24/post1170465/2/

この2つの記事に共通する内容を要約すれば、「昨季はそれまで高い数字を維持していたBABIPが著しく低下。走塁面はデータ的に衰えてないので、昨季は運が悪かっただけ。BABIPは一定の値に収束する性質があるから、今季例年通りの高BABIPに戻れば打撃面の成績も元通りになるかも」といったこと。

しかし、結局これも何故昨季を通じて不振に陥り、BABIPが低下したのか説明できてないんですよね。「昨季はフライの割合が増加し、運悪く打ち取られたからBABIPが低下した」と結論付けても、データ云々言っておきながら主観で決めてるだけじゃないのって思うんです。それに、BABIP自体は11月17日付の記事でも触れられているように、打球の角度や速度などにも影響されるとも言われています。

(ちなみに、11月17日付の記事では「内野安打率の低下とともに、ライナー性の打球割合が減ってフライの割合が上昇した」といった形で打球角度には言及されているものの、移籍後の12月24日付の記事ではその部分が省かれていて、最新の記事になると根拠が薄くなってしまっているのが不思議ではあるのですが…)

(参考:不思議な指標BABIPの読み取り方、選手の個性を知る、ゴロ、フライ、ライナーとの関連性 - 野球技術向上同好会

このようなBABIPの性質があるならば、打球速度や角度の推移についても触れる必要があるはず。にも関わらず、西川選手の打球速度や角度の具体的な推移や比較に言及せず、"BABIPは一定の数字に収束するもの"、"昨季は運が悪かった"だけで片付けてしまうのはあまりにも安易ではないでしょうか。それに、フライの割合が増えたことに言及するのであれば、「何故急にそれまでの持ち味であったライナー性の打球割合が減って、フライの割合が増えてしまったのか」といったことも触れる必要があるかと思われますが、この原因や背景もはっきりと分からないので、結局今季復活するかどうかは判断できないかと思います。(実際、今年の西川選手の不安定な調子を考えるとやはり運の悪さだけでは判断できないのでは…と感じます)

じゃあ結論付けなきゃいいやってことで、「〜の可能性があります」みたいな感じとなってフワッとした結論にとどまるのも、どうも納得がいかない。まあ個人が趣味でやってるブログなら可能性レベルの話でもギリ許せるかもしれませんが、メディアや有料コンテンツでたかだかこの程度の分析を書き連ねることはどうかと思います。それに可能性云々ならデータが介入していなくてもどうとでも言えますし、結局この手の記事って「調べたけど結局よくわかりませんでした!」系の記事と何ら変わらないのではないかと思うのです。客観的なデータを元に考えたとしても、使い方次第では主観が入り込む結果・結論となってしまう。つまり、他の原因やら"可能性"もあるのではと、一義的に言い切れない・断言できない(のに断言してしまっている)ところが非常に気になってしまうんですよね。

こういう分析を誰にでも起こりうる身近な体の不調で例えるならば、「最近肌荒れとか体がだるく感じることがあって、体調が良かった頃と比較してみたらここ数日便秘気味だった。肌荒れとか体のだるさは便秘が原因だったんですね〜」って言ってる感じ。いやいや、普通ここで終わりますか?って話ですよ。もしかしたら他に原因があって便秘が発生しているのかもしれないし、仮に便秘が原因って分かったのならば、ストレス性のものなのか、生活習慣や水分不足、運動不足、はたまた腹筋力の低下に起因してるのか、そこまで分からないと治そうにも何もできないじゃないですか。

「プレーしてるのは選手であって、お前が野球やってるわけじゃないやんけ」って言われるかもしれないですが、好調ならそうなった原因を維持できるものなのか、不調なら早くその原因を取り除けるものなのかといったところが見てる側としては一番気になるのではないでしょうか。にも関わらず、データで判断して単なるラベル付けをするにとどまるのは、その気になった部分を説明しているとは思えないし、建設的じゃないように感じます。

もちろん、最近の傾向や過去との比較って感じで、単にデータを紹介してるだけのつもりなら別なんですけどね。ただ、これだと締まりがない。このデータで結局何が言いたいのか?と捉えられかねず、誰の目にも止まらないということも考えられます。記事を書いて取り上げる方としては、こういった単純な取り上げ方も難しいんだろうなということも感じるところです。

ここまで色々言ってきましたが、結局野球は数字遊びじゃなくて実際に体を動かして行うスポーツ。データ云々を持ち出しても、最終的にはその辺の個人や分析会社じゃ判断できるものではなく、それこそ筑波大の川村教授や國學院大の神事教授といった動作解析の専門家レベルでようやく真の好不調の原因まで迫れるものと思ってます(メンタル面も含めれば野球経験者の場合もあるかと)。そういったこともあって、データ系の記事を小姑のように見てしまうのかもしれない。ただ、そういった専門家の視点からすれば、直近の傾向やデータというものは非常に有用かもしれませんがね。